外国語学部

留学体験記 水津智恵

私は2007年3月から2008年1月まで派遣留学生として、中国の大連外国語学院(以下大外)に留学しました。大外には毎年北九大から5人ずつ派遣されているので、過去に派遣された人と体験したことはほぼ同じです。ただみなさんと内容がかぶると私の体験記らしさが出ないので、キレイ事は抜きでなるべく私自身が感じたことをありのままに書こうと思います。

まずは学校生活についてですが、前期は漢学院の高級A班に入りました。中国に来たばかりなのに、たまたまHSK8級を持っていたため先生にも「それなら高級班でしょ」と言われ、ずうずうしくも一番上のクラスに入ってしまいました(泣)それから2ヶ月間劣等感の塊だったことは言うまでもありません・・笑まず最初の会話の授業で打ちのめされました。今考えれば当たり前ですが、みんなよくしゃべる!私と秋山さん以外はすでに半年以上留学していたので、難しい表現もさらっと出てきてかなり焦りました。ちなみにそのクラスはロシア人、韓国人、日本人で構成されていたのですが、ロシア人のしゃべる速さは圧巻でした。先生にいつも褒められていて、「どうすればあんな風に話せるようになるんだろう」と考えていました。さすがに一番上のクラスだけあって、教科書の内容もかなり難しく、精読の教科書は文章語中心、会話の教科書も討論で使うような格式ばった表現が多かった気がします。毎日膨大な量の新出単語と格闘し、予習にはかなりの時間をかけていましたが、それにもだんだん慣れてきてDVDを見たりする余裕も出てきました。でも毎日1時間半の昼寝は欠かせませんでしたけど(笑)。

授業の中で最も苦労したのは、やはり「討論」だったと思います。その主な原因は教科書の内容にありました。毎回環境問題や余暇の意義、子供の教育問題など日本語で考えても難しいテーマばかりだったので、自分の知識をかき集めるのだけで一苦労でした。しかも口語の先生が厳しく、発表の仕方(文の構成)から語法に至るまで細かくチェックされていたので、討論の時間が苦痛で仕方ありませんでした。しかし私は負けず嫌いなので、クラスを替えようという考えは全くなく、むしろ頑張ってみんなに追いつき、先生にも認めてもらおうと思って必死で発表していました。その結果、期末試験では堂々と自分の意見が言えるようになり、先生からも「他のクラスでよくあなたの話をしているよ」と言ってもらえました。この先生からの言葉は本当に嬉しかったです。

後期は本科の3年、経済貿易コースに編入しました。ここでは漢学院と違って経済や国際貿易、中国の文化など中国語以外のことも学べます。ただ本科生は基本的に大外を卒業することが目標で来ているので、私たちと違って最低2〜3年は中国にいる人たちばかりです。そのため生徒の雰囲気や考え方も漢学院よりゆるく、授業をサボったりテストでカンニングしたりしている人がたくさんいました(特にロシア人!)。授業に関しては経済学の授業が一番難しかったです。中国語専攻だからもちろん経済についてあまり勉強してこなかったし、中国語だから余計に難しい!唯一面白かったことといえば先生の英語の発音ですかねえ・・笑。それでも単位がかかっているので必死で頑張りました。中国語の授業(口語、精読)に関しては、高級Aより易しい内容だったので、宿題なんかも楽でした。この頃からやっと前期で習ったことが使えるようになったなあ、最初に鍛えられておいて良かったと感じるようになり、もっと深く中国語を理解できるようになりたいと思いました。私のいたクラスは本当に雰囲気がよく、晩会(日本の飲み会のような感じ)もしょっちゅうあって楽しかったです。韓国人と日本人しかいませんでしたが、日本の大学のようなノリでした!だから本科に編入したいと思う人は、思い切って行ってみて下さい!HSK6級が必要と書いてありますが、交換留学生なので融通が利きますよ(笑)

次はみなさんが一番心配しているであろう生活について・・

まずは<住まい>に関してですが、私は一年間大外の寮に住み続けました。二人部屋は一日32元と設備のわりに大して安くないのですが、外で部屋を借りるとなると手続きが面倒そうだったので、おとなしく住んでいました(笑)ルームメイトは韓国人で、前期と後期では違う人と住みました。彼女たちの行動を観察していると、韓国人特有の色んな共通点が見えてきました。例えば常に誰かと一緒(一人でご飯を食べていると友達がいない人と思われバカにされるらしい・・)、電話の声が大きい、毎日家族に電話する、お酒好き、日本のアニメをよく知っているなど・・でも基本的に面倒見が良いので、私が体調を崩したときなどは本気で心配してくれました。

いくら隣の国とは言っても考え方はやっぱり違うので、それなりに苦労することもありますが、寝起きを共にした同屋というのは特別な思い入れがあります。一つ残念だったのは、一年間も韓国人と住んでいながら、あまり韓国語を覚えられなかったこと!私は不器用な性格なので、中国語に没頭してしまうと二ヶ国語同時にやる、というのは無理なんですねえ(泣)今から考えると非常に惜しいことをしたなあと思います。日本人と韓国人が一緒に住むパターンはすごく多いので、これから行くみなさんは中国語と同時に韓国語も覚えてトリリンガルを目指してみてください。

お次は<食>について!これは私の得意分野です(笑)食べ歩きマップを作ろうとしたぐらい、色んなお店に行きました。とはいっても毎回行くところは決まっていたのですが・・ここでは私イチオシのお店を紹介します!食べるのが大好きな人はぜひ行ってみて下さい。

1.周記米線(大外正門前の中学の角を左折、チェーン店あり)
大連といえばやっぱり米?でしょ(笑)米線というのはお米でできたうどんのような麺で、うどんよりもっとつるっとしています。卵が乗ったものや、肉味噌がかかったものもありますが、一番のおすすめは過橋米線(10元)です。これは深めの土鍋に熱いスープが入れてあり、その中に野菜、肉、ゆで卵(ウズラ)と米?を入れて食べるというもので、ボリューム満点です!このスープには麻油という油が入れてあり、冷めにくくなっています。中華料理には珍しくあっさりした味なので、日本人は一度食べるとはまります(ちなみに私は最低週2で通ってました)。大連には至る所に米?のお店がありますが、実は雲南省の名物なんです!驚きでしょ?(笑)お店によってスープの味や具材も変わるので、色んなお店に行って食べ比べるのも楽しいですよ。
<参考>
・稲花香米線坊(大外からKTVに向かって伸びる坂道の途中、東都亭の隣、レジのお姉さんが親切、辣肉米線は激辛!)
・江氏兄弟橋香園(新華書店隣、全国チェーン、やはり過橋がおすすめ、スープはとんこつラーメンみたいな感じ)
*もし時間とお金に余裕がある人は雲南省に行って本場の米線を食べてみて!!

2.東都亭(稲花香米線坊の隣、韓国料理店)
ここもよく行きました。朝鮮族の人がやっているお店で、韓国人でいつも賑っています。他にも韓国料理店はあるのになぜここかって?雰囲気がいいからですよ(笑)友達と辛い料理をたいらげながら、2時間ぐらいいつも居座っておしゃべりしていました。食後にコーヒーは出るし、常連になるとサービスで一品つけてくれたりと、本当にいいお店でした*^^*席もテーブルとお座席とがあるので、晩会(飲み会)の定番でもありました。このお店のおすすめは、冷麺、石鍋拌飯(石焼ビビンバ)、牛肉辣湯(牛肉入りの辛いスープ)、石鍋?牛肉(プルコギ)など。今はメニューも増えて、写真付きになっているのですごく注文しやすいと思います。お店のオーナーのおばさんは愛想がよく、何回も通いたくなるお店です。
<参考>
・大洋燒肉(東都亭と稲花香米線坊の間、韓国人留学生がバイトしている、お昼限定の10元メニューがおすすめ)
・大元燒肉(気象台の前にある小さなお店、店員の愛想がいい、おすすめは参鶏湯・サムゲタン)

3.玉糧百飯店(坂の一番下、快客隣)
中華といえばここ!他の店とボリュームが違うんです(笑)その分お値段も少し高いけど・・おすすめは鉄板豆腐、地三鮮(ジャガイモ、なす、ピーマンを炒めたもの)、西?柿炒鶏蛋(トマトと卵の炒め物)、京醤肉絲(豚肉と葱を豆腐の皮で包んで食べる)、卵炒飯、野菜スープなど挙げたらキリがありません。この店のおばさんとは特に仲が良く、旅行のお土産を渡したりしていました。留学生に慣れており、下手な中国語でも分かってくれるし、冬の日に薄着をしていると「寒いでしょ?」といって心配してくれました。色んな意味でおすすめです!
<参考>
・明海小吃部(坂の途中、写真屋の2軒隣)
大外界隈では有名なお店。いつも満席状態だから、相席は覚悟で。店員の愛想は悪いが味は保証できる。おすすめは地三鮮、軟?鶏肉(鶏のから揚げ)など。量が少なめだから、お持ち帰りするのも良し。
・聯惠商店(気象台の近く、良友金伴の隣、通称めぐみ)
ここも留学生行きつけのお店。でも上の2軒より1〜2元安い!おすすめは香辣肉絲、紅焼土豆片(じゃがいものこってり炒め)。

*番外編*
女の子は甘いものが食べたくなると思うので、その時はここに行ってみて↓↓
・克林蒂(坂の途中、韓国人がやっているパン屋さんで、中国にしては珍しく日本と同じようなパンが食べられる。値段は3元〜。店内ではコーヒーを飲んだりケーキを食べたりできるので、学生憩いの場。)
・蜂蜜面包店(克林蒂の目の前、4個で1元という安さが売り。その代わり種類は1種類しかない。焼きたてがおすすめ)
・散歩路(23路バス停の下の通りを左折、大連教育委員会?の建物の隣。いわゆるマンガ喫茶で、置いているのはもちろん日本のマンガ。おじさん&学生の溜まり場になっているが、静かで料理もおいしい。一番のおすすめはチョコパフェ。)
・焼き芋屋さん(これはお店じゃないです・笑路上の至る所で焼き芋を売っている。日本の石焼芋よりは大きく、甘い。おいしい芋を見分けるコツは、ちょっと細長いものを選ぶこと!丸くてふくれたものは意外と甘くない・笑大きいものは4〜4.5元ぐらいでおなかいっぱいになるので、食べ過ぎに注意!!)
その他マクドナルドやケンタッキーなどのファーストフード店、銀平、味の蔵、亜橋カレーなどの日本料理店もたくさんあります。ここでは紹介しきれないので、興味がある人は自分の足で行ってみてください!

「食」についてついつい長く書いてしまいましたが、今度は買い物事情について触れたいと思います。大外は街の中心部にあるのでかなり便利です。一番近いところで言うと楽購(ハイモール)ですね。ここに行けば大抵の物は揃います。ただ店員の態度は悪いですけど・・セール中や何かのイベントの時は頭に変な帽子?を被っているので要チェック!笑日本食が食べたくなったらマイカルに直行です。新瑪特(大連商場)の隣にあり、文房具から食品、生活用品まで日本のものが置いてあります。ただ中国では輸入品になるので、かなり高い!例えばカップラーメン一個25元、チョコレート一箱15〜20元とかね。留学生活も2、3ヶ月過ぎたあたりから日本食が恋しくなると思うので、たまにご褒美のつもりで買うのもいいかもしれません。

こう書くと日本と何ら変わらない感じがするかもしれませんが、問題はここから!大連には勝利広場という巨大な地下街があります。ここでは服やアクセサリー、CDなど色々なものを売っていますが、いちいち値切って買わないといけないのです!これは慣れていない日本人にとって大問題です。言葉の問題は抜きにしても、絶対に自分が提示した値段で買うぞ!という粘り強さがなければ安く買うことはできません。ここでは表示価格の半額ぐらいから値切り始めるのが普通です。でも向こうは外国人が金持ちだということを知っているので、なかなか譲りません。時には店員と喧嘩になって公安が来たりもします(笑)私は最後まであまり慣れませんでしたが、要領よくなると面白いという人もいるので、勇気を出してやってみるといいと思います。

それから放課後と休日の過ごし方ですが、基本的に授業の予習&宿題、DVD鑑賞orインターネット、KTVに行って熱唱(建物の中がすごくキレイ)、バスを乗り回して遠出、などです。時には互相学習の相手と遊んだりもしますが、行動のパターンは大体決まっています(笑)日本の大学みたいにサークルはないし、バイトもできないので小学生みたいに時間がたっぷりあります。「なんかつまらなさそう・・」と思う人もいるかもしれませんが、これで結構時間足りないんですよ、実際。でもこの時間をどう使うかは自分次第なので、もっと遊びたい人は楽しみを見つけてください!

そして留学中の一番の楽しみといえば旅行ですが、ここまでがだいぶ長くなってしまったので私が行った場所だけの説明にします。私が一年で行ったのは華東地方(南京、蘇州、杭州、烏鎮,上海,無錫,いずれもツアーで)、桂林(ツアー)、北京、丹東、ハルビンです。中国での旅は普通、列車が中心です。理由は「安いから」ただそれだけですが、新幹線なんてものは存在しないので、ここで不便さを味わうのも勉強になると思います。それから私のイチオシはツアー旅行!もちろん中国人と一緒のやつです(笑)これに参加すると、中国人の本当の姿が分かります。向こうも外国人は珍しいので色々聞いてくるし、集合場所など分からないことがあれば教えてくれます。またガイドの人の説明も中国語の勉強になるので、是非一度参加してみてください。どこで申し込めばいいか分からない人は、とりあえずフラマホテル(富??大酒店)5階の旅行社へ!日本部の高明さんが親切に教えてくれますよ。

最後に中国人とうまくやっていく秘訣を・・・笑

みなさんは中国人というとどんなイメージを持っていますか?やっぱり「反日デモ」のイメージでしょうか。私も帰国後に色んな人から聞かれましたが、戦争の話をする人はほとんどいません。特に大連は日本人も多く、親日的な街なので大丈夫です。でも本当に悩まされるのは「日本人との考え方の違い」です。そんなの当たり前じゃん!というツッコミが聞こえてきそうですが、この問題には予想以上に悩まされ、ストレスのもとになります。私がこの一年で学んだ中国人との付き合い方は、「広い心で用心深く」です。これは具体的にどういうことかと言うと・・・

1、細かいことをいちいち気にしない
そう、これが一番大事です。いくら経済発展が著しいからといって、人の習慣まではそう簡単に変わりません。例えば食事の時のマナーが悪い、信号無視、服務員なのにサービスしようとしない、どこでも大声で喋る等、日本では考えられないことが山ほどあります。こういったことは、中国に何ヶ月も住んでいるとよく目に付きます。見慣れたと思ってもやっぱり気になるんですよねえ(笑)「何でもっとトイレをキレイに使えないのか」「なんで人のプライバシーに関わる事を聞くのか」とか・・でもやっている本人たちは別に悪気はないんです。今までずっとやってきたからそうしているだけ。まあ教育の問題でもあるんですが。最近は都市部を中心に改善しようとしているようですが、日本の13倍人口がいるためなかなか浸透しないのが実状です。だから、中国人のマナーの悪さを感じてもいちいち目くじらを立てないこと。自分に害が及ぶようであれば抗議してもいいですけど・・笑私はなかなかできなかったのですが、こういう日本人との違いまで「おもしろい!」と感じるようになればストレスはかなり軽減されると思われます。

2、相手の言うことを鵜呑みにしない
中国で生活する上で基本中の基本です。別に中国人全員を疑え、ということではありませんが、日本人と比べると適当なことを言う人が多い気がします。日本人はわりと何でもきっちり厳密にやる習慣がありますが、中国人は違います。「明日やるから」と言ってもやってくれるとは限りません。重要なことは何度も念を押して伝える必要があります。それから私が信用してなかったのは、商売人とタクシーの運転手です。この人たちには気をつけて下さい!両方とも金儲けのためなら何でもします。特に外国人は中国語が通じにくいという弱点があるので、最初のうちは騙されます。こればかりは仕方がない。授業料を払ったと思って、次は騙されないように備えてください。具体的な方法としては、タクシーに乗ったらメーターの確認(ちゃんと初乗り料金が表示してあるか、もし0だったらすぐ抗議!)、違う道を走っていないか(これはちょっと難しいかも・・)、物を買うときは偽モノかどうか(電化製品は特に注意)、値段がやたら高くないか、などがあります。「日本人は金持ってるんだから」とよく言われていましたが、そういう問題じゃない。とにかく慣れるまで、その人の話が本当かどうか吟味する必要があります。

また、これは女の子に特に気をつけてほしいのですが、中国人の友達を作るときは、なるべく女の子にしましょう。どうしても中国人の彼氏が欲しい!という人は別ですが(笑)というのも、「日本語の勉強がしたい」といって連絡先を聞き出し、悪戯しようとする男子学生もいるからです。実際に留学生が事件に巻き込まれる、ということもないとは限りません。こうなるともう大連の治安の問題になるのですが、とにかく油断するな、ということです。中国語もある程度話せるようになって、日本で生活しているような気分になっていると、つい気が緩みがちですが、自分が「外国人」ということを忘れないで下さい!

とここまで長々書いてきましたが、留学生活の様子が少しでも伝わったでしょうか?もし私の文章を読んで、「中国へ留学してみたい」と思った人がいれば幸いです。最後はマイナスな内容になってしまいましたが、そういう部分も含めて自分の勉強だと思ってください。だって「外国」にいるんですから(笑)いい事もたくさんあります。中国語とじっくり向き合える、実践の機会が多いので会話力が伸びる、中国人だけでなく色んな人と出会える、など・・どれも中国に来なければ経験できないことです。食品偽装問題、チベット騒乱など、いろいろ問題のある国ですが、こんな興味深い国もなかなかないと私は思います。留学するとなると、金銭的な問題や安全面での問題など様々なリスクが伴いますが、少しでも興味のある人は是非チャレンジしてください!その後の自分の人生を変えるような発見があること間違いナシですから。

ちなみに私の今の夢は、中国語の通訳になり、中国でも仕事をどんどんしていくことです。そうなると、また闘いの日々が続くことになりそうですが、今回の留学の経験を生かして頑張りたいと思います!!本当に最後になりましたが、中国で出会った全ての人々、北九大のみんな、そして経済面で本当に負担をかけてしまった両親に感謝します。ありがとうございました。

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