外国語学部

中国ぶらり旅 中村知代

私は2006年度3月から1年間、大連外国語学院で中国語と経済学を学びました。留学中の生活面は他の方が書いているので、私は各地に旅行に言った時のことを少し紹介したいと思います。私は元々旅行が好きなので、中国でも臆することなく友達や1人でぶらりと旅行をしてきました。旅行は主に夏に行きましたが、中国は完全週休二日なので比較的近いところは週末を利用していくこともできます。私は約20都市ほどまわりました。

1.黒龍江省ハルピン

ハルピン市(哈爾濱)は中国で最も北部に位置する黒龍江省の省会(省都)です。

ハルピンは極寒の地と恐れられ冬には氷点下―20度まで下がるので、みんな冬にはなかなか行きたがらない所です。しかしその極寒の季節に『氷灯節』という氷祭りが開催されます。私は北海道の雪祭りに行ったことがないのでなかなか比べようもありませんが、何事も大きい中国なので、ハルピンの氷祭りも北海道の雪祭りより大規模なのではないでしょうか。氷で世界的に有名な建造物を作っており、夕方は色とりどりにライトアップしているのでとても綺麗です。―20度と恐らくへたな冷凍庫より寒いでしょうが、ダウンジャケットを着込めば問題ないです。道端でアイスを冷凍庫にいれずそのまま売っているという面白い風景も見られます。またハルピンは全国で一番標準語が綺麗な都市として有名です。実際待ち行くおじさん、おばさんも綺麗な標準語を話すので留学にもお勧めの街です。

2.遼寧省瀋陽

遼寧省の省会(省都)です。

大連から電車で約6時間ほどのところです。かの有名な故宮がここにもあります。瀋陽にある故宮は『瀋陽故宮』と呼ばれ北京にある故宮が建てられる以前のもので、金の時代の皇居であり清朝の離宮でした。北京の故宮とは比べ物にならないくらい小さなものですが、それでも皇居なのでそれなりに大きくて綺麗です。世界遺産にも登録されています。

少しはなれたところに『北陵公園』という後金の国王ホンタイジのお墓があります。お墓といってもほぼだだっ広い公園です。中国の公園は基本的に非常に広く、一日かけてやっとまわれるかなというくらいです。この公園前や中は花がたくさん植えられており綺麗で、中には湖や売店などがあり一日中のんびりと過ごせます。

他にも最近できたばかりですが、『九・一八歴史博物館』(九一八事変(満州事変)以降の「侵略」と「抗日戦争」の歴史が展示されています。)というところもお勧めです。日本軍の資料も豊富で、むしろ日本軍に関しての資料のほうが多いのではないかと思うほどです。館内は冷房がガンガンに効いているので、人々が雪の中を逃げる場面を再現した展示をみると本当に寒々します。中国から見た日中戦争を学ぶことができました。

3.遼寧省大連

大連は私が日常生活を送った場所です。海の街なのでほとんど海がない中国内陸の人々にとっては観光地ですが、四方を海に囲まれた日本人にとってはこれといった観光地はありません。日本人も多いこともあり、街並みに清潔感があり日々を過ごすにはとても過ごしやすい環境です。天津やハルピンから遊びに来た友達たちが感動したほどです。私も中国の様々な都市に行きましたが、やはり大連が一番綺麗で過ごしやすい都市だと思います。

4.遼寧省旅順

大連市内からバスで約1時間ほどした所にある軍港の町です。歴史的にも有名ですが、まだ観光地として未発達で軍港ということもあり、日本人が単独で行く事はできません。中国の旅行社に問い合わせても日本人だと分かると断られます。特定の日本人向け旅行社に問い合わせ、バスとガイドを貸しきってやっと行くことができました。日露戦争後やステッセル司令官と乃木希典大将が会見所が当時のまま生生しく残っています。戦争の悲惨さを改めて認識しました。

5.遼寧省錦州

錦州は中国人の友達が住んでいる都市で夏休みに少しお邪魔をさせてもらいました。割りと小さな街でバイク三輪車が通っているような街です。駅前からバスで1時間ほどしたところに『天橋』という観光地がありました。ここは潮の満ち引きで丘から見える無人島まで橋のように道ができるため『天橋』と呼ばれるそうです。島には高い塔があり周りを見渡せます。こんな小さな街にもなかなかいい観光地があるのだと驚く同時に、海を見て、日本が懐かしくなりました。

6.北京市

北京は言わずと知れた中国の首都です。2008年に北京オリンピックも開催されるとあって、街中オリンピックに向けて改装工事をしていたので、観光地のほとんどがまともに見ることができませんでした。しかし私は宿泊したユースホステルは中国の昔の街並み"胡同(フートン)"の中にあったので道端で将棋をするおじさんや露天がならぶ狭い路地など、私達が想像する中国らしい中国を味わうことができました。北京に行く際はそのユースホステルがお勧めです。

7.新疆ウイグル自治区ウルムチ

ウルムチは新疆ウイグル自治区の省会(省都)です。

以前新疆に旅行に行ったことのある友達が非常によかったと言っていたので、私も行ってみたいと思い夏休みを利用して1人でぶらりと行ってきました。大連から電車で行くには一度北京で降りて乗り換えが必要です。北京まで約13時間、北京からウルムチまでは約44時間かかります。二日とちょっとひたすら電車の中で過ごしました。中国の長距離電車は座席と寝台席があり、大連から北京までは座席のチケットしかとれませんでしたが、北京からウルムチまでは幸運にも寝台席がとれたので快適に過ごせました。

ウルムチに着くとそこはもう別世界でした。全ての標識はアラビア文字と漢字の併用で、街のあちこちには頭にスカーフを巻いたウイグル族の女性や中東系の顔立ちをした人々がいました。最初はしまった、異国に来てしまったと思ったほどです。

ウルムチ市内の二道橋市場というとことには、毎日大バザールが開かれています。ここには観光客以外はほぼウイグル人しかいません。夜になると屋台がならび、ウイグル人のみになり本当に中国でないみたいです。ウルムチは北京時間を使っていますが実際には北京と2時間時差があります。私が新疆に行ったのは夏だったので9時頃になってやっと日が暮れ始めました。一日が長く感じるので、なんだかお得な気分でした。

ウルムチ郊外には『天池』という綺麗な湖があります。標高1980mの高地で四方を山に囲まれ、湖の奥には万年雪山のボゴダ山が見えます。景色が本当に素晴らしく、空の青と木々の緑、湖の緑色のコントラストに感動しました。周辺のあちこちには少数民族のカザフ族が実際に住んでいるゲル(テント状簡易式家屋)があり、彼らの生活風景ものぞけました。人民公園から毎日1日ツアーが出ているのでお手軽に参加できます。

また『新疆ウイグル自治区博物館』も一見の価値があります。ここは別名『ミイラ博物館』と呼ばれ、ミイラが間近で観察できます。中でも"楼蘭美女"と呼ばれるミイラは保存状態もよく、そのミイラの姿でも綺麗なので生前はもっと美人だったことでしょう。1階には新疆で生活している少数民族の生活を実際の生活用品や服装、ゲルを用いて紹介しているので、少数民族についても知ることが出来ました。

8.新疆ウイグル自治区カラマイ

カラマイはウルムチからバスで約5時間ほど行ったところにあり、荒野の広がる町です。なかでも『魔鬼城』はまるで古代都市がすべて砂になってしまったかようです。お城のような砂の山がずらっと並んだ場所です。地殻変動によって湖が干上がり、その後風食によって出来上がったので砂漠とはまたちがった様相です。一面巨大な砂のお城で人は本当に小さくて、自然の中では人はちっぽけな存在だなと改めて実感しました。

9.新疆ウイグル自治区アルタイ

アルタイはウルムチからバスで約14時間ほどのところにあり、モンゴル、ロシア、カザフスタンの国境付近にあります。ここの見所はなんといっても『ハナス湖』です。私はこの場所をウルムチに向かう電車の中で知り合った地元の人に聞くまで知りませんでしたが、中国人の間では『九賽溝』(中国で最も美しい場所と言われる景勝地)に匹敵するほどの美しい湖があると有名だそうです。標高は1374mと『天池』よりは低いのですが、曇っていたためか夏に行ったのに非常に寒く、みんな厚手の上着を着ていました。私は夏だからと長袖の服を持っていってなかったので急遽ポンチョを調達して寒さをしのぎました。湖の面積は44.8km2と非常に大きく『天池』の約10倍もあります。この湖周辺はハナス自然保護景観自治区に指定されており、周辺の空気も自然もとても新鮮で気持ちも心も洗われるようでした。自治区内にはトワ人が生活しており、彼らの暮す村に立ち寄ることができ、彼らの生活風景をのぞけて楽しいです。彼らは中国ではまだ独立した民族として承認されておらず、生活スタイルは全く違うのに似通っているということで、モンゴル族の一部として扱われています。近年ハナス湖への観光客が急増しているので、自然保護区といえども開発が進んでいるので、早めに行くことをお勧めします。

10.上海市

上海はご存知、中国最大の都市です。中国人の先生曰く、現代の中国は北京、古代は西安、未来は上海らしいです。先生の言うとおり中心街は非常に発達しておりモダンでおしゃれな雰囲気をしています。しかし、やはりこれが中国というようなところもあります。上海駅の北口です。上海駅の南口は高層ビルが立ち並びいかにも都市という感じですが、北口はまだ開発中で、外で麻雀にふけるおばあさんや外で髪を切る散髪屋さんがチラホラ見受けられる下町が残っています。私が行った時は旧市街地を取り壊した状態の瓦礫の山もありました。上海の大都市の一面だけじゃなくて、そんな意外な面も見られてなかなか面白かったです。

さすが大都市と思ったのは、外灘の夜景です。租界のクラッシクな建物が暖かい色にライトアップされ雰囲気をかもし出しています。

11.四川省成都

成都は噂どおり晴れていても常にどんよりした都市ですが、三国志好きにはたまらない都市です。成都には『武侯祠』という諸葛孔明の祠堂があり、三国志の遺物、文物が多数あります。三国志にあまり興味がない方も隣には当時の町を再現した時代村のようなものがあり、シャオチー(ちょっとした食べ物)が並んでいて街並みと美味しい食べ物を楽しめます。また四川といえば激辛料理です。火鍋という本当に火が出そうなくらい辛い鍋から、本場麻婆豆腐やちょこちょこ色々なものを食べられるシャオチーまで食文化も豊富な町です。

12.四川省峨眉山・楽山

峨眉山・楽山は成都からバスで約2時間ほどのことろにあります。峨眉山は四大仏教名山の一つで、麓から山頂までに至るまでにも多数の寺院があります。猿山としても有名で、自然の中で生活する猿間じかで見るころができました。時には荷物を取られることがあるほど間じかで見れます。中国の猿は日本猿より一回りほど大きく毛深かったですが、愛嬌のあることろは世界共通のようです。

楽山は世界一大きな石仏で有名な山です。もう山一つ丸々が大仏といっても差し障りないほどです。高さ71m、幅29mもあり、奈良の大仏の6倍以上もの大きさです。さすが中国と思った瞬間でした。

13.四川省九塞溝・黄竜

『九塞溝』は成都からバスで約10時間ほどのところにあります。一日かかりますが、本当に行く価値ありです。新疆の『天池』や『ハナス湖』も美しかったですが、『九塞溝』は湖の色がまったく違います。九塞溝とは正式には『九塞溝国家級風景名勝区』といい総面積720km2もある景勝地で、敷地内には専用バスが行きかい様々な川、泉、滝、湿地、急流を楽しむことができます。入り口は標高1900mですが、奥は3100mにもあるので夏でも涼しく非常に気持ちいいです。夏は雪も完全に溶け、緑も豊かで、エメラルドグリーンの水の色と豊富な色彩の緑と空の青とのコントラストが最高です。その景色は童話の世界のようで別世界にいるような気分になりました。

『黄竜』は『九塞溝』よりさらに山奥に進んだところにあります。標高5000mにもなり、空気が薄いのでゆっくり歩いてみて回らないと酸欠になってしまいます。『黄竜』の水は『九賽溝』より薄い色をしていました。これもまた美しく、賛美するのに自分の語彙の乏しさを悔しく感じるほどでした。『黄竜』は棚田のように段々になった湖が広がり、少し離れた高いところから見ると、更に美しいです。

14.雲南省昆明

昆明は雲南省の省会(省都)です。雲南省は全国で一番少数民族が多くすむ都市で25もの少数民族が暮らしており、各地で独特の民族衣装をまとった人々に出会えます。

昆明の見所は『石林』というその名の通り石の林です。何メートルもある巨石が林の中の木のようにずらっと並んでいます。人工的に作ったものではなく、自然にできた奇景で、中はまるで迷路のようです。高台から全体を眺めると驚かざるをえないです。また『九郷』という中国最大の鍾乳洞があります。日本の鍾乳洞のちょっと薄気味悪い感じとはまた違って、色とりどりのライトでライトアップされているのでとても明るい感じです。中には売店やトイレも備え付けられており、ショーも見ることができます。日本とはまた違った雰囲気を楽しめます。

15.雲南省大理

大理は昆明からバスで約5時間ほどのところにあります。外壁に囲まれた古城が残っており、町全体が当時の様子を物語っています。まるでタイムスリップしたように感じます。中の広場では少数身族の人々民族衣装を着て踊ったり歌ったりしており、参加することもできます。中には毛沢東そっくりさんがおり、一緒に写真をとったりサインをしてもらうこともできました。

16.雲南省麗江

成都からバスで約10時間ほどのところにあります。麗江では『玉龍雪山』という山に行きました。私が行ったときはあいにく雨で万年雪を頂いた山を見ることはできませんでした。しかし、少数民族の人々が彼方此方にお店を開いているので、色々なものを見て回ったり食べて回ったりと楽しめました。またヤク(黒毛牛)を見ることもでき面白かったです。

最後に、こんな長々とした文章を読んでいただきありがとうございます。今回記した街意外にも、もっと小さな町や面白い場所に行きましたがとても書ききれませんでした。中国は本当にいろんな意味で大きいです。私たちが普段思い描く中国というのは沿岸部に住んでいる漢民族の生活のほんの一部です。少数民族といっても雲南省に住む猫族は日本の総人口に匹敵するほどの人口です。留学に行くと、行った先が居心地がよくて動きたくないという人や、現地の生活や文化に慣れず早く帰国したいと思う人もいるかもしれません。しかし、ちょっと足を伸ばせば、そことは全く違った異文化に触れることができます。日本ではなかなかできない体験がたくさんできます。もちろん気分のいいものだけではないと思いますが、私はそれも経験であり時間がたてば面白かったと感じることができると思います。留学というと勉強を頑張らなきゃと思うかもしれませんが、大型の連休や夏休み、冬休みを利用して是非旅行に行ってみてください。様々な人、文化、考え方に触れ自分自身が成長すると思います。

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