知ることで考える経済史

担当教員土井 徹平 所属経済学科 専門分野環境経済学、公共経済学

ゼミの内容

  • 地域の歴史を知る
     このゼミは経済を歴史的観点からとらえて学ぶゼミです。そのうえで、ここでは大学が北九州にあるという「地の利」を活かしたいと思います。北九州には現在も「北九州工業地帯」があります。そしてこの工業地帯の形成は明治時代に端を発しています。つまり北九州は、明治から現代に至るまでの日本の近代化・工業化をそのまま体言した地域であり、日本の経済・社会がどのような経緯をたどって発展してきたのか、北九州の歴史を通じて理解することができます。 それだけでなく、北九大に通う学生にとって北九州の歴史を学ぶことは、「地元」の歴史を知ることでもあります。そして「地元」の歴史を知ることはその地域のアイデンティティを知ることでもあり、大学を卒業し「地元」の発展に貢献する立場となった際、必ず役立ちます。したがってこのゼミでは、北九州市史編さん委員会編『北九州市史』など北九州の経済について記された著書をテキストとしつつ、近代以降の経済史を学んでいただきます。
  • フィールドワーク
     歴史は過ぎ去った過去のことですから、歴史を学ぶうえでは、過去の時代状況をイメージする力=イマジネーションが大事な意味を持ちます。そしてこのイマジネーションをつちかうためには、それを刺激してくれる「現場」に足を運ぶことが一番です。
     先に述べたように、北九州には明治時代以降、発展を遂げてきた「北九州工業地帯」があり、ここには産業関係の古い建物や施設(いわゆる「産業遺産」)も数多く残されています。この「地の利」を活かさない手はありません。したがってこのゼミでは、定期的に街に出て、ゼミ生とのフィールドワークを行います。

ゼミ生はこんなことができるようになる!

  • 過去を知ることで現代を理解できるようになる
     海外旅行をすると、自分が日本人であることをしみじみ実感するといいます。これは、海外に行くと、日本人である自分と外国人である他者とを比較し、それぞれの相違点を発見することになるためです。この結果、当たり前すぎて、日頃、意識すらしなかった自分の文化的な特徴を客観的に理解するようになります。
     歴史を学ぶということもこれと同じで、過去を知り現代と同じ部分と違う部分に気付くことで、現代あるいは現代に生きる自分自身を客観的に理解することを目的としています。歴史を知ることは、あくまで現代を理解するための手段です。過去の出来事に詳しくなるためではないのです。
     このゼミでは学生に、過去をもとに現代の経済・社会、そして自分自身が生きる時代状況について考え、それらを客観的に理解する歴史学的な思考法を身につけていただきます。
  • 歴史をふまえ地域の未来を考えられる人材になる
    北九大の学生の多くは、卒業後、北九州(あるいは北部九州)で就職し、地域を支え地域の発展を担っていく立場に身を置くことになります。ただ、そうした学生が卒業するまで、北九州の歴史を知らず、歴史的に培われてきた地域のアイデンティティや地域的特性に無知だったとしたらどうでしょう。その先、北九州の現在を正しく理解し、地域の実情に見合った現実的な未来を描けるでしょうか。
    地域の歴史を知るということは、「この地域がどのようなアドバンテージ=優位性を持っており、今後、ここで何をできるのか(どのような可能性があるのか)」見極められる、高スペックな「北九州人」としての資質を養うことでもあります。ゼミでは北九州の歴史を学ぶことで、そうしたスペックを身につけていただきたいと思います。

このゼミを目指す人の推奨履修モデル

  • 1年次:現代日本経済入門A・B、経済学入門Ⅰ・Ⅱ、企業と社会
  • 2年次:日本経済史(日本経済史Ⅰ)・日本経済史特講(日本経済史Ⅱ)、地域経済Ⅰ・Ⅱ、北九州経済分析Ⅰ・Ⅱ

ゼミの活動内容

 1学期は北九州の経済史に関する著書の輪読、フィールドワークを行い、基礎的な知識を養ってもらいます。そのうえで2学期は輪読とともに学生自身の研究報告、フィールドワークを、適宜、行います。

ゼミで使用している「テキスト」や「おススメ本(漫画も含む)」

ゼミで使用しているテキスト

ゼミで使用しているテキストは、北九州市史編さん委員会編『北九州市史 近代・現代 産業経済Ⅰ・Ⅱ』(1991年・1992年、北九州市)です。
おススメ本は、『写真アルバム 北九州の昭和』(2018年、樹林舎)です。

ゼミ指導教員の担当授業

  • 日本経済史(日本経済史Ⅰ)、日本経済史特講(日本経済史Ⅱ)
    日本経済史では世界経済史的な観点から日本の経済を考え、日本経済史特講では逆に、北九州という身近な事例から日本経済史を学びます。
  • 知の創造特講B(戦後の日本経済) ※基盤教育
    戦後、日本が経済大国として発展していくプロセスと、「バブル崩壊」以後の「失われた20年」を、経済的事象のみでなく社会・文化の変化にも着目しながら論じます。
  • 経済史 ※社会システム研究科
    イギリスの「産業革命」を事例として、「近代」がいかなる時代としてあるのか、個人・社会・国家の観点から論じます。
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