書誌情報:Hamada, I., Hamano, T., & Shiobara, Y. (Eds.). (2025). Japanese Migrations to Australia: Transformation and Heterogeneity. Routledge.
Q. 今回は、書籍 “Japanese Migration to Australia” について、その著者であられる人間関係学科の濱野健先生にインタビューをしていきたいと思います。濱野先生、よろしくお願いします。
濱野先生
Q. さっそくですが、濱野先生。まずは、簡単に自己紹介をお願いします。
私は社会学者です。社会学とは、現代社会の制度や、私たちの人間関係が、さまざまな社会的条件のもとでどのように生み出され、変化しているのかを探究する学問です。 なかでも私は、人の移動や、そのなかで移り変わっていく家族関係のあり方などに関する研究を行ったり、それに関係した授業を担当したりしています。
濱野先生
Q. ありがとうございます。今回ご紹介するこちらの書籍は、全体としてどのようなことを追求された本なのでしょうか?
この企画では、日本からオーストラリアへ移住した人たちについて、19世紀から続く長い歴史に触れるとともに、現在、日本とオーストラリアという二つの国のあいだで生きる多様な日本人移住者や、オーストラリアで生まれ育った次世代の姿を描くことを目的としました。
濱野先生
Q.なるほど。では、この中で特に濱野先生が担当された箇所について、もう少し詳しく教えて頂けますか?
私が主に担当したのは、ひとつはこの本の編集、すなわち全体の取りまとめです。オーストラリアと日本で研究しているほかの2名の研究者に声をかけていただいたことがきっかけとなり、3人でその役割を担当しました。 また、論文の寄稿者として、この本の趣旨に関する序論の執筆や、オーストラリアにおける日本人女性の国際結婚と移住の歴史を取り上げた第4章、そして現地の日系コミュニティと地域社会との関わりを調査した結果をまとめた第13章などを担当しました。
濱野先生
Q.濱野先生は、どうしてそのテーマに関心をお持ちになったのでしょうか?
私が初めてオーストラリアを訪れたのは、大学生のときでした。日本の大学から姉妹校へ交換留学生として派遣されたのがきっかけです。 そこで、オーストラリアの歴史や、移民社会としての文化的多様性とその寛容性にとても感銘を受けました。留学中に、日本からの移住者もオーストラリア社会のさまざまな場面で活躍していることを知りました。そうした関心から、その後オーストラリアの大学院へ進学し、この研究テーマに取り組むことになりました。
濱野先生
Q.そうだったのですね。研究を進めていく中で、濱野先生が特に印象に残ったことはありましたか?
私がこの研究を始めた直後に特に驚いたのは、その当時、つまり2000年代初め頃のオーストラリアでは、アメリカの日系人社会が形成したような「日本人街」の姿が見られなかったことでした。また、日本からの永住者の圧倒的多数が女性であり、その多くが現地のパートナーとの国際結婚による移住者たちだったという事実にも驚きました。 そこから、彼女たちのオーストラリア社会での日常や、地域との関わりについて研究してみたいと思うようになりました。
濱野先生
Q.ちなみに濱野先生は、2025年度の文学部特別講演会「共生への応答―地域社会における多文化共生の現在と未来―」のコーディーネートもされていましたね。そのことも今回の本と関係があるのでしょうか。
オーストラリアは建国以来、長きにわたり、人種差別的な「白豪主義」という移民政策をとり続け、有色人種のオーストラリアへの移住を厳しく制限していました。 しかしながら、1970年代の終わりになると、今度は「多文化主義政策」を推進するようになり、世界中のすべての人びとに門戸を開くようになりました。その結果、オーストラリアでは、世界でも類を見ない文化的多様性が見られるようになりました。 グローバル化が進むなかで、日本社会の文化的多様化も進んでいます。そうした現在の状況を踏まえて、私たちのこれからの社会のあり方について考える機会を持ちたいと考え、この特別講演会の企画を担当しました。
濱野先生
Q.濱野先生は、この書籍を特にどのような人に読んでもらいたいと思っていますか?また、その方々へのメッセージをお願いします。
この本は英語で出版されていますので、まずは世界中のたくさんの人に読んでもらいたいと思います。 一方で、日本からのオーストラリア移住については、日本の読者にもまだあまり知られていない部分が多いと思います。そのため、日本の読者にもぜひ手に取ってもらえたらと思います。
濱野先生
Q.それでは最後に、この著書を通して読者の皆さんに投げかけたい「問い」を一言、お願いします。
私たちは、どのようなときに、自分が生まれ育った地域や国を離れて「移住者」になるのでしょうか? 新たな社会で「移住者」として生きることに、どのような期待を持つのでしょうか? 私たちにとって、「移住者」と共に生きること、つまり共生するために必要なこととは何でしょうか? 高校生の皆さんには、ぜひこれらについて想像してもらえたらと思います。
濱野先生
Q.とても興味深い内容でした。
今回はここまでです。
濱野先生、ありがとうございました!
濱野先生